「熊野材」について

熊野川流域は、気象、土壌などの自然条件に恵まれ、豊かな森林資源を背景として、杉・桧などの美林が形成されました。また、良質な木材や木材製品として生産される「熊野材」は、主に建築用材として関東、京阪神、東海、九州方面に出荷されています。

「熊野材」の特質

① 目込みで、強度・耐久性に優れています。
② 色合いが良く、つやが出ます。
③ すなおな木で、狂いが少ない。
④ 高度な製材技術とゆきとどいた品質管理。

熊野地方の銘木

熊野地方は海抜0メートルから1,000メートルを超える山岳地域まであり、そこに亜熱帯植物から亜寒帯植物まで数多くの種類の植物が自生しています。そのバラエティーに富んだ植物相の中から、「銘木」と賞される当地域に生きる樹種をいくつか紹介します。

針葉樹の例(1)

アカマツ
建築材として強く、粘りがあり、家の梁(はり)や棟(むね)に使われる。

トガサワラ
廊下や壁板などに使われる。紀伊半島と四国のみに分布。

コウヤマキ
材は水湿に強く、建築材では板類・天井板・水桶・浴槽・橋桁材等に使われる。

モミ
材は耐久性が低いが、大径木があり、多量に産出するので、建築材・梱包用材・製紙原料などに用いられる。

針葉樹の例(2)

スギ
樹木は極めて通直性が高く、木肌はやや粗い。特有の匂いがある。ヒノキに比べて強度は若干劣りますが、材は比較的軽軟で、主に建築材(柱・板・ヌキなど)、建具材・土木材・電柱・船舶材・家具材・桶樽・箸など様々なものに用いられます。

ヒノキ
樹木は通直で木肌は細かく、特有の芳香と光沢がある。強度性は高く、優れた木材として建築材(特に高級な物、柱、床廻り、縁、甲板など)、家具材、建具材、器具材、彫刻材など、幅広く用いられている。

イチイガシ
材は強く粘りがある。加工しやすく、建築材・器具などに使われる。

トガ
建築材として梁(はり)・棟(むね)などに使われる。

広葉樹の例(1)

アカシデ
材は和風建築物の床柱に良い。皮付きの床柱にも使う。器具・印板などに使われている。

イタヤカエデ
堅くて重く、密で粘り強い。木目も美しく、細工物・家具などに用いられる。

ブナ
木目が美しいため、家具・床板などに多く用いられる。樹皮は染料となる。

カツラ
材は腐りにくく、工芸用・器具材に利用され、貴重。

広葉樹の例(2)

ヒメシャラ(サルスベリ)
材は粘り強く腐りにくい。床柱に皮付きのまま使われたり、ステッキ・杵にも使われる。

ケヤキ
家の大黒柱・室内装飾用。建築材として珍重される。

ホオ
材は軽軟で、家具・内部装飾材・寄木細工などに使用される。

クス
建築材・家具などに使われる。樟脳を採る。

広葉樹の例(3)

モミジ
秋には紅葉し森を色鮮やかに染める。器具や家具などに使われる。

トチ
種子は粉にして食用(栃餅など)にする。床板・天井板・テーブル・洋家具類・細工用に用いられる。

ヤマザクラ
桜の代表「吉野山の桜」はこの種類。器具・家具などに使われる。

熊野木材の歩み

新宮市は古来より熊野林業と共に木材の町として知られ、大峯山系に源を発する十津川と、大台ケ原山系より流れ出る北山川とを合わせる熊野川の河口にあり、その流域面積24万ヘクタールの集散地として発展し、木材は本市産業の基盤となっています。

西暦和暦できごと
1583天正11年豊臣秀吉、大阪築城にあたり、良材を特に熊野に求めて以来、「熊野材」の声価をあげるに至った。
1804文化元年江戸取引のもっとも盛んであった文化・文政の時代から明治初年にかけて、新宮木材界は東京建築業界の活況にともなって大いに発展した。
1869明治2年11代新宮城・水野忠幹、東京深川三好町で木材問屋を開業。
1873明治6年松、杉、桧、楠、欅、柏の六木(留木)伐採の禁を解く。
1881明治14年「新宮商法会議所」設立申請をなす(新宮木協の前身)。
1891明治24年貯木場開掘工事完成(通称「旧堀」)。
1896明治29年新宮木材界、台湾へ進出。
1899明治32年新宮町内にはじめて電燈ともる。
1909明治42年新貯木場開掘(通称「新堀」)。
1913大正2年新宮鉄道全通(新宮~勝浦間)。
1914大正3年新宮港(池田港)浅州2箇所を浚渫。
1923大正12年関東大震災勃発。木材価格急騰、市場好転。
1933昭和8年新宮市誕生。人口33,194人。
1935昭和10年熊野大橋完成。
1946昭和21年南海道大地震発生。
1950昭和25年新宮川原最後の一軒、川原を引き払う。川原町は消滅。「新宮木材協同組合」設立。
1951昭和26年「第1回 木霊塔建立供養式」を挙行。
1964昭和39年この頃、北山川流筏完全に停止。
1965昭和40年㈱新宮原木市場を設立。熊野川電源開発事業総工事完了。
1967昭和42年新宮製材界、外材にも進出。
1972昭和47年新宮木材協同組合、木材会館建設。
1973昭和48年公有水面の埋立、製材団地の形成。
1974昭和49年「和歌山県(熊野)優良木材展示会」を開催。
1977昭和52年「熊野木まつり」開催。
1978昭和53年「第1回 児童・生徒木工工作展」を開催。
1979昭和54年新宮港開港。
1981昭和56年「新宮木材協同組合 百年祭」挙行。
1984昭和59年「新宮木材協同組合 百年史」発刊。
1987昭和62年「新宮ウッディフェア」開催。
1990平成2年「木材まつり」開催。
1992平成4年組合独自の利子補給融資実施。
1995平成7年新宮木材協同組合パンフレット「熊野材」発刊。
1997平成9年新宮蜂伏に産直木造モデル住宅を建設。
1999平成11年巴チップ協同組合を創立。
2000平成12年自己資金による融資を実行。
2002平成14年木材界年表「120年史」発刊。